漆器って何?漆の歴史と塗り方を紹介

漆器って何?漆の歴史と塗り方を紹介
艶のある赤や黒の塗りが美しい漆器は、それだけでも上品な華やかさがあり、料理を盛り付ければ料理を、花を活ければ花を引き立て、目を楽しませてくれます。また、漆器にはふと手に取ってみたくなるような温もりや親しみやすさもあります。
人々の心を惹きつけてやまない漆器の塗り方・技法を紹介していきます。

漆器に使われている漆について

漆器は見た目の美しさと実用性を兼ね備えている

漆器とは、木、紙、金属、布など様々な素材に漆を塗り重ねて作られた工芸品です。器に限らず、漆塗りを施した品は広く漆器と呼ばれます。

お椀や重箱、お盆、花器、アクセサリーや文具など、日用品から高級品まで、様々な場面で日本人の生活を彩ってきました。見た目の美しさだけでなく、漆は接着性、断熱性、耐熱性、防腐性、抗菌性に優れ、酸やアルカリ、アルコールにも強いという特性を持つ、非常に実用的な面もあるのです。

漆は貴重だった

漆の木の樹液(樹脂)として採取され、1本の木から約200 gしかとれない貴重品です。精製してゴミなどの混ざりものを取り除いたものを精製生漆(きうるし)と呼びます。

漆の歴史とは

漆は縄文時代に使われるようになり、漆器を接着し矢を作っていました。後期には、漆塗りの櫛が出土しています。また、割れた土器の修復に漆が接着剤として現代の金継ぎのように使用されていました。

優れた特性を生かし、漆は日本で古くから塗料として、寺社仏閣、家具、宝飾品、武具、仏壇など、様々な用途に使われてきました。
木の文化を持ち、湿気の多い日本において、漆は木製の建物や道具を腐食や害虫から守ってきたのです。

塗り方は1つじゃない

日本には、会津塗、輪島塗、山中漆器、鎌倉彫、琉球漆器など30ヵ所ほど漆器の産地があります。産地によって素材や塗り方にそれぞれの特色を持ち、漆器文化を豊かにしてきました。

特に有名な産地

・越前漆器
福井県の鯖江市で制作される漆器のことです。蒔絵や沈金などの装飾が施された漆器は上品で晴れやかな作品が多いのが特徴です。祝い事や祝儀用調度品に用いられています。

越前漆器について詳しく知りたい方は「越前漆器の歴史は1500年!全国一の伝統漆器!」をご覧ください。

・輪島塗
輪島塗とは、石川県輪島市で受け継がれている漆器の塗り方です。丈夫で美しいのが特徴で、壊れても修理に出すことで長年使用し続けることができます。

輪島塗について詳しく知りたい方は「伝統ある日本の漆器「輪島塗」の特徴」をご覧ください。

・会津塗
会津塗りとは、福島県会津地方の伝統工芸品である会津漆器のことです。塗りの技術が高度で多彩なことから、会津漆器と呼ぶのではなく、会津塗りと呼ばれているようです。

会津塗について詳しく知りたい方は「漆器の3大産地の1つ!会津塗りの特徴や歴史をご紹介」をご覧ください。

・琉球漆器
琉球漆器とは、沖縄県で作られている漆器ことです。琉球漆器はさまざまな加飾の技法があることが最大の特徴で、海外からも高い評価を得ています。中国から、漆器の技法を巧みに取り入れ、沖縄独自の漆器が作られるようになりました。

琉球漆器について詳しく知りたい方は「沖縄の漆器!「琉球漆器」のすべて」をご覧ください。

・京漆器
京漆器とは、京都で作られている漆器のことです。茶の湯の文化とともに現代に受け継がれてきました。「わび」「さび」に徹した内面的に優雅で深い味わいがあります。

京漆器について詳しく知りたい方は「京漆器の特徴は?歴史と一緒にご紹介」をご覧ください。

・木曽漆器
木曽漆器とは現在の長野県塩尻市周辺で作られている漆器のことです。
木曽漆器の産地は海抜約900メートルという高地になります。夏はとても涼しく、冬はとても寒く、漆器を作るのに最適な環境になっています。

木曽漆器について詳しく知りたい方は「木曽漆器の歴史と技法」をご覧ください。

漆塗りの工程

漆塗りの工程
漆塗りには、下塗り、中塗り、上塗りの3つの工程があります。何度も漆を塗り重ね、磨くことによって漆器特有の美しい艶や温もりが出るのです。薄く塗ると加工がしやすく、塗る回数が多いほど耐久性は高くなります。

下塗り:下地作りが完了した素地に漆を塗り込み、漆器を堅牢にします。
塗り、乾燥、炭により磨く作業を繰り返します。

中塗り:上塗りを美しく仕上げるため下塗りの塗りムラをなくし、漆器をより強固にするための工程です。

上塗り:仕上げの塗りです。最も上質な漆を使い、埃やゴミがつかないように細心の注意を払って均一な厚みに塗ります。

漆塗りの技法

漆塗りの技法
漆塗りの仕上げには、様々な技法が施されており、その中でも代表的な漆塗りをご紹介します。

・摺り漆/拭き漆
木地に生漆を摺り込むように塗ります。和紙や布などで漆をふき取っては乾燥させ、磨く作業を繰り返します。
木目の美しさをいかした塗り方です。

・呂色(蝋色)塗り
上塗りのときに油分を加えない生漆を塗り、炭で丁寧に磨く作業を繰り返します。
黒々と深い蝋色の光沢が出ます。

・塗立/花塗
上塗りのときに油分を加えた漆を使用し、磨かずに仕上げる技法です。油分があるため磨かなくても光沢を放ち、柔らかな風合いがあります。油を含まない蝋色漆の塗立てを真塗と言います。

・木地呂塗
ケヤキやトチなど木目の美しい木地に目止め(木地の導管を埋めておく作業)を施し、油分を含まない半透明の透漆(すきうるし)を塗ります。

春慶塗
ヒバやヒノキなど木目の美しい木地に塗ります。木地を赤や黄色に着色し、その上から油分を加えた透漆を塗ります。自然の木目をいかした黄金色の漆器です。

・掻き合わせ塗り/目はじき塗り
ケヤキ、キリ、クリなど木目(導管)のはっきりした素材を使い、柿渋を塗って漆を吸わない状態にしてから色漆で上塗りします。上することで塗りで木肌の凹凸が浮かび上がってきます。

・溜塗
下塗りや中塗りで赤や青、緑といった色漆を塗り、上塗りに透漆を塗る技法です。使い込むほど透漆の透明度が増します。
溜塗

根来塗
和歌山県の根来寺の僧が自ら使うために作っていた漆塗りの仏具や食器に施されていた塗りであることが名前の由来とされています。

中塗りで黒漆を塗り、上塗りに朱漆を塗る技法で、使い込むほどに下層の黒色が浮き出てきて味わいが出てくるのが特徴です。現代では、制作時に磨いて下層の黒色が浮き出るように仕上げます。

・鎌倉彫
カツラやイチョウなどの木地に模様を彫り、中塗りで黒漆を塗り、その上に色漆を塗って仕上げます。鎌倉時代から鎌倉及びその周辺で作られてきた工芸品です。

・堆朱・堆黒
漆を数十回から数百回塗り重ねて厚い層を作り、模様を刻み込む技法です。朱漆を塗り重ねたものを「堆朱」、黒漆を塗り重ねたものを「堆黒」と呼びます。

漆塗りと乾燥

漆塗りと乾燥
漆は乾くことで硬化し、漆器の堅牢さをもたらし長持ちさせますが、湿度70%程度の湿度がなければ乾かないという特性があります。

漆の硬化には漆が持つ酵素ラッカーゼが関わっており、ラッカーゼが活発に働くには空気中の水分の酸素が必要です。そのため、漆を乾燥させるには、漆の質や環境により数時間から数十時間と非常に時間がかかります。

漆の色

漆の色
漆器には赤や黒、緑、黄など様々な(色漆)が使われていますが、漆自体は透明な琥珀色をしています。黒漆は生漆に水酸化鉄を入れて酸化反応を起こし、黒色を出しています。黒色以外の色は、精製した漆に顔料を入れて作ります。

まとめ

古くから受け継がれてきた漆塗りの技術と職人の丹念な仕事の賜物といっても過言ではありません。

手間と時間をかけて漆を塗り重ねた漆器は、使うほどに艶や味わいが出る器です。修理や塗り直しによって半永久的に使うことができます。ぜひ、毎日の生活にアクセントとして取り入れ、木のぬくもりや漆塗りの艶やかな美しさを楽しんでみてください。

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